私、五人百姓 池商店の池龍太郎が28代目を継承したのは、コロナ禍の真っ只中だ。
日本有数の観光地であるこんぴらさんの参道に面する店舗。人口減少や観光客の減少はあるものの、それでも年間260万人近くの観光客が来てくれていた地域である。それが2020年、0人になる。新型コロナウイルスだ。その中で家業を継承し、アトツギとして動き始める。
そんな中に来てくれるお客様たちは本当にありがたい。けれども、みんな自分の会社やコミュニティの中でお忍びで旅行に来ている。「ここに行ってきたよ」とお裾分けするのがお土産の素敵な日本ならではの文化であるが、会社にお土産など買って帰ろうものなら「この時期に旅行に行っていたのか」と言われかねない。
ではそんな中、地域の飴屋のアトツギに何ができるのか。お忍びだったけれど、それでも買って帰りたい、誰かに伝えたいと思えるような物語を乗せた商品を作ることだと私は思った。
五人百姓 池商店には780年の歴史がある。まず徹底的に取り組んだのは、先祖が残してくれている歴史の本を読み漁ることだった。こうして、口伝でも私たちが知らなかったあるフレーズが見つかる。
「五人百姓は金刀比羅宮の境内で5人集まって傘をさして飴を売っているが、実は日本一雨の降らない香川県において、神事のお手伝いをする五人百姓が傘の下で飴を売る姿には、天気の「雨」と食べる「飴」をかけ、雨乞いをするという意味がある。つまり「恵みの雨を降らせる飴屋さん」である」と書かれた文章を見つけたのだ。これは先代や先々代からも聞いていなかった物語だった。
この物語があるのであれば、私たちは香川県の、本当にこだわって取り組まれている生産者の皆さんと一緒に走ることができる。

瀬戸大橋ができた頃は多くの方が海を渡って香川に来てくれたが、私はそのピークが過ぎた次の時代に生まれた人間だ。同世代と一緒に戦いたい思いはありつつも、人が減る中で先代たちは次世代に自信をもって「家業を継ぎなさい」とは言えない、子どもを思うからこそ言えない、そんな状況になっていた。
私自身、小さな子供が生まれたばかりのタイミング。家業を継ぎたくなる形にして次に託すのは当たり前だと思っているが、その中で地域の宝を残し、残したいものと一緒に走る飴屋さんであり続けたいと考えた。
この「恵みの雨を降らせる」という文化を軸に、香川県で本当に素晴らしいフルーツを作る生産者さんと連携しようと動き始める。

香川県には、本当にこだわってフルーツを作ってくれている生産者の皆さんがたくさんいる。
しかしながらそのこだわりは、ただ出荷するだけではその背景(物語)が語られることはない。
私たちがその物語と共に日本一溶けにくい私たちの飴で包むことで、こだわりのフルーツたちを美しい姿のまま、物語と共に遠くへ持って帰っていただける。
私たちはこうして生まれたこの商品を「恵みのあめ」と名付けた。

オンラインが主流となるコロナ禍の中、とある全国雑誌の企画で、47都道府県から各地1点しか選ばれないお土産に2年連続で選出された。推薦してくださった香川県出身のフリーアナウンサー・中野美奈子さんには本当に感謝している。「こんな飴を作っている歴史ある飴屋さんがあるんだ」と、全国の多くの方からご連絡をいただくきっかけとなった。
恵みのあめの種類は今も増え続け、たくさんの方々に手に取っていただいている。歴史とストーリーを受け取り、それを手に取り、誰かに語りたくなる。
これが、五人百姓 池商店が目指す次世代へつなぐ物語を乗せた商品開発である。
▽『恵みのあめ』をオンラインショップで購入する
これからもこのnoteで、生み出されているものたちのこだわりを発信していこうと思う。お楽しみに。